コンサートのレビューです。
「桜ファンタジー」
「ジャワリ」
「デルフォイの風」
「いちめんの菜の花」
「ピンダロスの涙」 
「畝土奈(セドナ)」
「TANGO-AKIKO(タングァキーコ」 
「山頭火頌」
菜の花コンサートによせて
玉木宏樹
 
 西潟さんと約30年ぶりに再会したのは一昨年の夏だった。彼女の第一回目のリサイタルで「女郎花」なる、とんでもない作曲を提供して以来である。丁度その時私は、ある日舞のお嬢様のステージの為に常磐津や長唄のエッセンスをシンセで表現する為に邦楽と孤軍奮闘中だった。彼女は私の純正律運動に興味を持って訪れてくれたのだけど、シンセの曲を聴いてすぐに「もったいないから私が生演奏する」と言って、私のコンサートに参加してくれた。それを機に、その年末の彼女のリサイタル用に新曲「ジャワリ」を書き、幸い好評を頂いて、それ以来、新曲を書いて書いての大攻勢のもと、現在まで約十曲ほど立て続けに作曲し、今年の初めには『菜の花』のCDまで創ることになり、今日のコンサートに到った。
 さてこのコンサート、実に晴れがましく、嬉しいことなのだが、ここに到達するまで、彼女とは意見の違いも生じて、一時はやめるかという話にもなった。その原因は「作曲家」という存在に対する見解の相違だ。このコンサートは彼女の企画構成で「CD完成記念」だったのだけれど、柱が「玉木宏樹作品展」になっていることに私は心底驚いた。私が「作曲する」という行為は、一般の人が思うような崇高なものではない。私は自分でもヴァイオリンを弾くので、演奏という行為は知り尽くしている。だから私の「作曲」は「演奏」されなければ何の根拠もない。大概の現代音楽の作曲家は演奏家に無理難題にを押し付け、まるで演奏家を自分の奴隷のように扱う傾向があるが、私は正反対で、作曲こそ、演奏家の奴隷、所詮は戯作者でしかないと思っている。私は音律に拘って作曲をするけれど、それを表現してくれるのは演奏家であって、作曲者の手柄でもなんでもない。
 現代音楽の作曲家は自他共に「アーチスト」らしいのだけれど、私の場合はあくまでも「アルチザン(職人)」であり、まだ現役の職人が自分の「作品展」をやるようなおこがましいことには大反対したのである。でもまあ、西潟さんの思い入れは大事にしなければならないし、私の曲を聴いて玉木は「アーチスト」だと思って下さる方もおられるかもしれないので、OKし、新曲も2曲提供した。ぜひ「アルチザン」の心意気を感じて頂きたいと願う次第である。

■日 時: 2004年4月8日(木)PM7:00開演(PM6:30開場)
■会 場: 芝・ABC会館ホール
 
■入場料: ¥4000 (会員割引¥3000)
■主 催: 特定非営利活動法人・純正律音楽研究会
■後 援: 現代邦楽研究所
■協 力: TAオフィス

■プログラム

竹内敏信スライド写真上映 其の1

1.「桜ファンタジー」 
箏:吉原佐知子 松本京子  十七絃:野澤佐保子
三味線:山本普乃 野澤徹也 上原潤之介  尺八:山口賢治

2.「ジャワリ」
三味線1:野澤徹也  三味線2:上原潤之介 [※エレクトリック三味線夢絃21使用]

3. 新作委嘱・初演「デルフォイの風」
三味線:山本普乃  箏:野澤佐保子  十七絃:松本京子

4.「いちめんの菜の花」〜山村暮鳥・玉木宏樹作詞〜
唄/三味線:西潟昭子  ヴァイオリン:玉木宏樹
箏:吉原佐知子  尺八:山口賢治

5.「ピンダロスの涙」 
三味線:西潟昭子  十七絃:石垣清美

6. 新作委嘱・初演「畝土奈(セドナ)」
箏:福永千恵子   三味線:西潟昭子

7.「TANGO-AKIKO」
三味線:西潟昭子  ヴァイオリン:玉木宏樹

8.「山頭火頌」〜種田山頭火句集より〜
唄:西潟昭子  
箏:福永千恵子  十七絃:石垣清美  三味線:山本普乃  尺八:三橋貴風

竹内敏信スライド写真上映 其の2

司会:国弘よう子

純正律音楽研究会・玉木宏樹氏のこと
西潟昭子
 
 今から29年前、30歳の時に第1回リサイタルをはじめて以来、新しい音や音楽を求めて活動して参りました。同時代の音楽とは何か、同世代の作曲家が三味線という楽器をどのようにとらえるか、興味深く、意義のある活動でした。しかしある時、前へ前へと進んできた自分の音楽や音に「これでいいのか」という疑問が生じました。「自分の音楽とは何なのか。初心に立ち返って、音の原点を見つめ直したい」と考えました。そんな折、本屋で見つけた玉木宏樹著「音の後進国日本〜純正律のすすめ〜」。
 玉木氏は第1回のリサイタルに壮絶な語りもの「女郎花」を作曲していただきました。それ以前に、芸大在学中20歳の時に仲間に入っていた、小説や評論のようなものを書いて読み合うというグループのリーダーでした。そんなことから懐かしく、また私の「音の原点を見つめ直したい」という願望に、ヒントとなる手がかりが掴めるのでは、と微かな望みを抱いてお会いしました。2002年7月暑い夏の日でした。それ以来、今日のプログラムのような邦楽器の作品が次々と誕生したのです。私はかなり強引だったかもしれませんが、邦楽器にとってはよかったのではないかと思っております。楽譜も出版し、多くの方々に演奏していただきたいと考えました。
 また純正律音楽研究会の活動は、子どもたちや障害者のための邦楽器ワークショップを実行するきっかけともなり、それは新たな私のライフワークとなりつつあります。そして音の原点や音楽を見つける手だてともなりました。
 邦楽器の持つ真に美しい響きを求めて、この「菜の花」コンサートが続けられることを強く願っております。どうか多くの方々のご協力とご支援をお願い申し上げます。