コンサートのレビューです。
 三絃(三味線)の新しい世界を探求し、第一線の作曲家に委嘱してきた活動の中から、特に西潟昭子のために作曲されたソロ作品を選び、その軌跡をたどり、楽器本来の音のあり方を再認識し、更なる未来への指針とするための演奏会です。
■日 時:2004年11月8日(月)19:00開演(18:30開場)
■会 場:銀座・王子ホール(地図はこちら)
       (中央区銀座4-7-5 TEL03-3564-0200)
入場料\5000(自由席)

■プログラム

1.「はじめのうた」池辺晋一郎作曲 1980年 委嘱

三絃という楽器に、ある種の尊厳を感じる。棹の太さによって、あるいは、ほんのちょっと弾いた「ひとくさり」によって、三絃が持つ幅広いさまざまな世界の、それぞれの領域がたちまち示されてしまうのである。私は、ずいぶん多くの、そしていろいろなジャンルの、邦楽器の作品を書いてきた。箏、尺八、琵琶、打楽器その他のために。しかし、三絃ソロのための作品は、この「はじめのうた」一つである。その1曲も、西潟さんの依頼を頂いてから、何年間も、なかなか書けずに苦しんだのだった。この楽器の「厳しさ」ゆえである。
そして、もう一点、西潟さんが明らかに併わせ持つ、若々しい現代性と、気品と落着きに支えられた伝統の重み‥‥この二面性に不可侵の畏怖を感じていたからでもある。エコー・マシンを使用し、三絃のさまざまな手法と、エコーの種類を駆使して、シンプルな「うた」に多様な変化を与えて行く− そういう発想で、やっと作曲に踏みきることができたのだった。以後、西潟さんは、国内外の、放送、レコード、ステージなどで、何度もこの曲を弾いて下さった。その間に、この曲は恐らく私の手を離れ、西潟さんの手によって育まれてきたのだ。
(池辺晋一郎)

当初、池辺さんは、一つずつの音から歌に変貌するさまを、エコーマシンを使って表現されたのでした。日本各地、ヨーロッパでも度々演奏して参りました。その後は、エコーマシンなしのバージョンで、増幅される音がなくても、歌が三絃から紡ぎ出されてくると確信して演奏しておりました。今回は久々に原曲バージョンで演奏致します。冗談ではなく、、、、まじめな歌なのです。
(西潟昭子)


2.「相聞歌」浦田健次郎作曲 2001年 委嘱

この作品は、貞心尼と良寛の和歌により”三味線弾き語り”の曲として作曲した。貞心尼は良寛晩年の弟子であり、この利発で勝気な愛弟子と良寛との間で取り交わされた贈答歌は多くあり、良寛の没後、貞心尼自らの手によって編纂し『はちすの露』として残されている。
この曲で用いた歌は贈答歌ではない、私が勝手に相聞歌に仕立てたものである。テキストとして用いた和歌は次のものである。

 おのづから冬の日かずの暮れ行けば待つともなきに春は来にけり   貞心尼

 いついつと待ちにし人は来りけり今はあひ見て何か思はむ      良寛

この二つの歌には貞心尼と良寛の性格が適確に表れているように思え、また残されている贈答歌を読むと
、このような歌のやりとりを想像する私の勝手を、お二人は許してくれるであろうか。
この曲は、近世邦楽の歌唱法とそれに相応する三味線の奏法で書かれている。西潟昭子さんの艶のある声音と、卓越した三味線の演奏により、貞心尼と良寛の心情を、ひいてはそれを越えた世界を表出してくれることを願い、期待しつつ作曲した。                          
(浦田健次郎)

前回のリサイタルで初演いたしましたが、良寛と貞心尼の歌に、迫り方が不充分だったと思いました。今回の再演はリベンジ。この歌を、無垢な心に託した恋心として表現できればと思います。前回の初演は大ホールでしたが、王子ホールは空間の広さが、歌にとって、丁度いいのではないかと思います。
(西潟昭子)

3.「NEGNAS」Yuki森本作曲 2004年 委嘱・初演

西潟昭子氏の為に書いた。彼女の三絃の魅力の最たるものは、その音色にあると思う。自らの音色に対する鋭い感性は実に共感できるもので、以前からその魅力を十二分に引き出す作品が書ければ、と思っていた。このNEGNASを持って漸くその仕事の緒についた感がある。タイトルの言葉は、三絃の事など全く知らない東ヨーロッパの古老がふとつぶやいた単語をそのまま書き取った。意味はわからないが、音の響きが頭に残って、気に入ってタイトルとした。右から読むと「三絃」となる事に気がついたのは、作品が出来てしばらくの後である。
(Yuki森本)

以前、三絃のために作曲していただいた作品は、現在、様変わりして尺八ソロの名曲と成りました。今回の作品はまさに三絃のための曲。森本氏の世界は三味線を越えて、もっと広い宇宙にあると感じます。音楽の不思議さを実感させますが、演奏家にとっても、三味線にとっても難しい作品です。
(西潟昭子)

4.「迷宮」玉木宏樹作曲 2003年 委嘱・初演

私は迷宮のファンです。小説ならばカフカの「城」、ブランショの「アミナダブ」をはじめ、迷宮もの推理小説も大好きです。絵ならマグリットやエッシャー、ゲームでも迷宮遊びやジグソーパズルも大好きなのですが、本物のテーマパークの迷路は駄目ですね。5分でパニックです。余談はさておき、私は以前「ジャワリ」という三絃Duoの曲を書きました。特に「サワリ」を意識した曲で、楽器がよく鳴る、と好評を頂いているようです。今回の独奏曲「迷宮」では、そのサワリの効果と、またサワリとは縁遠いツボの対比を意識して作曲しましたが、演奏は音程をとるのが少し難しいかも知れません。しかし作りの根底にはピタゴラス音律が頭にあり、邦楽独特の90セントという半音(平均律よりも狭く、エモーショナルな響きがする)が自然に出せるような工夫をしてみました。西潟さんともども「迷宮」の旅をお楽しみ下さい。      
(玉木宏樹)

作曲家・玉木宏樹氏には純正律音楽活動に参加させていただいてる関係で、多くの作品を提供していただいてます。この作品はCDのために作曲されました。その時はノンタイトルで何もこだわらず演奏しましたが、
今は「迷宮」の意味がしっかり解ってきました。演奏が迷宮に陥らないように、、、迷宮の旅を楽しめれば、、、、、成功です。
(西潟昭子)

5.三絃のための「組曲」第三楽章 第4楽章 ルー・ハリソン作曲 1996年 委嘱

西潟昭子さんがサンフランシスコに来られて、三絃のための作品を作曲してほしいと私に依頼をされたとき、私は嬉しさと怖さが同時にやってきたような気持ちになりました。最初は三絃と一つか二つの別の楽器のために書こうと思いましたが、その後まったくのソロでやることに決めました−「ダブル・ストップ」すらない単旋律の曲です。私はかつて東京とニューヨークで演じられた演劇作品や素晴らしい日本の人形劇の舞台で、三絃を聞いたときの記憶を呼び起こしました。西潟さんはご自分の三絃の見事な演奏の録音とともに、楽器の調律や音域、その他の点について基本的な情報を送ってくれました。そうしているうちに、私の心のなかには、古代エジプトの優美な絵画やペルシアの細密画、その他の地域の資料に描かれたロング・リュートのイメージが浮んできました。私は近年、6音旋法に魅力を感じているのですが、この4楽章の組曲では、そのうちの3楽章を6音旋法で作曲し、残りの楽章は、解放絃のドローン上で弾かれる半音階的なアリアのような曲にしました。
(ルー・ハリソン)

今は亡きルー・ハリソン(2002没)が精力的に三味線に取り組んで出来上がった作品です。日本固有の楽器である三味線をアジア・ユーラシア大陸にまで思いをはせて、楽器のルーツをさかのぼります。また、三味線弾きにとっては、カンドコロ(ポジション)の訓練が出来る練習曲としても、大変有効な曲です。
(西潟昭子)

■出演:西潟昭子(三絃、声)
■後援:財団法人ビクター伝統文化振興財団

■チケット取扱い
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