コンサートのレビューです。
プログラム表紙 演奏中の西潟昭子
1. 「Theory of the earth」  ジョヴァンニ・ソッリマ
ジョヴァンニ・ソッリマと西潟昭子 2. 「一本の緑陰樹として -As a Shade Tree-」
3. 「華の宴」  左から野澤徹也、西潟昭子、山本普乃
演奏終了後の挨拶(西潟昭子)  演奏終了後の挨拶
リハーサル風景 指揮者の合図を待つ真剣な表情
リハーサル風景全体
 三絃(三味線)の新しい音の世界を探求し、第一線の作曲家に委嘱してきた活動の中で、特に西潟昭子の大きな節目となるイベントとして、3人の個性あふれる作曲家に新曲を委嘱し、三味線とオーケストラとのコラボレーションをはかり、今までにない三味線音楽の世界を創造する。日本の伝統楽器本来の音のあり方を再認識しつつ、更に広くその楽器の可能性にせまる。今年度、洗足学園音楽大学で創設された現代邦楽コースを記念したコンサートである。
■日 時:2005年10月5日(水)19:00開演(18:00開場)
■会 場:東京芸術劇場大ホール
■プログラム

1.「Theory of the earth」 〜三味線と弦楽オーケストラのための〜

When Ms. Nishigata asked me to write a work for her and his instrument, I had a strange reaction, I was exited because of the possibility of a new sound and "feeling" adventure whit Shamisen (that I've used sometimes in the past just as a sampled sound, very sad・ but - at the same time - I was afraid because it was my first contact with this instrument, so different,
so strongly connected to your tradition, but so familiar to me for some reason (maybe the cello? Maybe because I've studied Sitar years ago? Maybe because I'm curious as like as a child.

Ms. Nishigata - one day of last year in Tokyo - has played for me some great music and she gave me (it was a great help) a beautiful book of photos of Fuji by Toshinobu Takeuchi. I saw many picture - misterious,
mysthic, with different light, magic, drammatic and flowers, trees, but all as like as another dimension - and I had feeling of all strings around Shamisen.

Later I've started to think more on this piece (it was april) in a little voulcanic island near sicily, alone, with no people and storm outside. And storm inside me.

The title is Theory of the earth and it's inspired by a book written by the scottish geologist James Hutton (1726-1797). The book is about composition, dissolution, and restoration of land upon the globe. But on my
piece I've focused my attention on two Voulcanos; Fuji and Etna... and I've thought of many things: rituals, religions, people, stories, mithology,
etc. But then I decided to have a very abstract approx. I cannot describe a volcano with out thinking any connection with humans or animals or energy in positive or negative way, for that reason mouvements are with no title.
It is only apparently a nature phenomena descripition.

The piece is a sort of "Concerto" in four linked mouvements alternating strong, primitive elements and slow areas.
The piece has a sort of spherical form, and sometimes a centrifugal force.
But at the end or somewhere it may sounds as like as a a fluid body of water.
I feel it as like as a very primitive work, and very primitive was the way how I've composed it.
(ジョヴァンニ・ソッリマ)
訳:   これまでサンプリングされた三味線音源を使ったことしかなかった私は、西潟昭子さんから三味線のための作品を書くように頼まれた時、三味線の新しいサウンドやフィーリングに冒険的に取り組む可能性への興奮と、西洋の楽器とはかなり異なり日本の伝統と強く結びついているこの楽器との初めての出会いへの恐れを感じました。ただ同じ弦楽器であるチェロを弾いていること、シタールを何年か前に学んだこと、あるいはまた子供のような好奇心のために、三味線には親しみを同時に感じました。

  昨年東京でお会いした折、西潟さんは三味線の生の演奏を聴かせてくれたあとで、竹内敏信さんの美しい富士山の写真集を見せて下さいました。そこには幻想的な神話、様々な光と影、魔法のような物語、花々や木々などが様々な角度から描かれていて、それを見ながら私は、三味線を取り巻く弦楽器群のイメージを感じ取りました。

  今年の4月、より深くこの作品について考えはじめた私は、やがて私の住むシシリー島に近い、嵐の吹き荒れる小さな火山の孤島を思い描きました。そして私の中に嵐が吹き始めました。

  「セオリー・オブ・ジ・アース(地球の理論)」は、地球上の陸地の創生について記した、スコットランドの地質学者ジェイムズ・ハットン(1726-1797)の著作に触発された題名です。しかし作曲においては、二つの火山・・・富士山とエトナ・・・と、そこで営なわれて来た儀式、宗教、人々、物語、神話などにに焦点を当てています。ただ、人間、動物、エネルギーと火山との抽象的な関連性によって、各楽0章は題名を持たずにそれらを表現しています。

  この作品は、原始的な要素と遅い部分を持つ4つの楽章が、それぞれ互いに強く関連付けられている協奏曲です。時折遠心力を持つ球形の構造形態には、流動的な水の形態をも感じられるかもしれません。非常に原始的な作品であると感じていますが、「非常に原始的であること」によって、私のこの作品は生まれたのです。
(ジョヴァンニ・ソッリマ)

【 ジョヴァンニ・ソッリマ 】
1962年シチリアのパレルモ生まれ。チェロをA.ヤニグロ、作曲をM.ケレメンらに師事。作品は、ロックやジャズに地中海周辺地域の民族音楽を組み合わせた独自のスタイルで、世界中のソリストやオーケストラ、ダンス・バレエ等の舞台公演に取り上げられている。Ph.グラスの推薦で注目された《アクイラルコ》ほか、イタリアのポップ歌手エリザ主演で話題となったオペラ《エリス島》、またクレーメルも録音した《チェロよ、歌え!》や、ヴェネツィア・ビエンナーレで一部上演された《ヨーゼフ・ボイス・ソング》などで知られる。チェリストとしても、指揮のC.アバド、G.シノーボリ、ピアノのJ.デームス、M.アルゲリッチらと共演。ジョヴァンニ・ソッリマ・バンドを率いて各地の劇場や音楽祭にも登場している。

2.「一本の緑陰樹として -As a Shade Tree-

三絃という楽器に〜これは、西潟昭子さんという稀有な演奏家の存在ゆえだと思うのだが〜凛としたものを感じる。これまで、西潟さんのための「はじめのうた」(ソロ作品・1980)ほか三絃を含む室内アンサンブルの曲などをいくつか書いてきたが、オーケストラとの「協奏曲」は初めてである。その凛としたものがすっくと立っているさまが脳裡から離れなかった。「一本の木のように」立っているそれは、陰を伴っていた。陰を作る木=緑陰樹である。三絃が緑陰樹。その陰は、終始同じ音型を打ちつづける大太鼓だ。もうひとつ、ハープも、同じ撥絃楽器として、三絃に寄り添うがごとき第二の陰を作る。大太鼓の変わらぬ音型には、歌舞伎の下座のイメージがあった。ただひとつの大太鼓で雪や波、山おろしをも表現してしまうあれである。雪音を模している、というより、しんしんと降る雪のさまを感じさせてしまう。実に優れた自然描写だ。とはいえ、しかし全体を「邦楽」的に書くことは、意識して避けた。いくつかのモードを基に、凛として力強い時間が、広々と発信されるように願った。僕のプランの上では、ほぼスケジュールどおり作曲が進行したが、西潟さんと指揮、オーケストラの方々には気をもませてしまったらしい。東京と札幌の仕事場、大阪、神戸、南京、北京などを転々としつつ書いた。スコアの脱稿は9月1日。全音より刊行予定。
                          
池辺晋一郎

【池辺晋一郎】
1943年生まれ。67年東京芸術大学卒業。71年同大学院修了。66年日本音楽コンクール第1位。同年音楽之友社室内楽作曲コンクール第1位。68年音楽之友社賞。以後ザルツブルクTVオペラ祭優秀賞、イタリア放送協会賞3度、国際エミー賞、芸術祭優秀賞4度、尾高賞2度、毎日映画コンクール音楽賞3度。日本アカデミー賞優秀音楽賞8度など。02年放送文化賞、04年紫綬褒章。現在、(社)日本作曲家協議会会長、東京音楽大学教授、東京オペラシティ、石川県立音楽堂、水戸芸術館、紀尾井ホールほかの監督、委員など。作品:交響曲・1〜7、オペラ「死神」ほか多数。映画「影武者」「楢山節考」「うなぎ」TV「八代将軍吉宗」「元禄繚乱」など。演劇音楽約450本、随筆集、対談集など。TV「N響アワー」にレギュラー出演。


3.「華の宴」


数年前、西潟さんから呼び出され、邦楽器とオーケストラのコンサートを考えてるんだけど、作曲してもらうとしたら何かいいアイディアはないかしら、と相談を受けた。内心、ソロ楽器との協奏曲はいやだなと思いつつ、飲み交わす酒の勢いで、「お祭りみたいなことだったらいいね。フェスティバル・コンチェルト・グロッソだ、邦楽器アンサンブルとオーケストラの合奏協奏曲で派手にドンチャン騒ぎをやろう」などと言ったのを覚えている。彼女もずっとそのことを覚えていて、去年「やるのよ」と言われ、本気だったんだと思っても後の祭り。そう、お祭りなのだ、この曲は、と気を取り直し、作曲を始めたのが今年5月。7月一杯で完成させた。この曲は古典的な3楽章。1楽章の冒頭はお祭りにふさわしく、往年のテレビ東京の時代劇「大江戸捜査網」のテーマで始まる。私が日活の撮影所に入り浸っていた27才の時の曲。青春物しかやったことのない日活が初めて時代劇に挑戦し、「捜査網」の字には「アンタッチャブル」のルビがあるほどアメリカのアクションTV映画を意識しており、いちばん時代劇には向いていない作曲家として私が選ばれた。二楽章は尺八メインの和風田園風景と村祭りが変拍子になったような感じ。三楽章は三絃と筝、十七絃がメインで、私が去年、三絃と十七絃のために作曲した「ピンダロスの涙」の後半部分が骨格となっている。とにかく理屈抜きでみんながお祭り気分になることだけを意識した。大いに楽しんで頂きたい。

玉木宏樹

【 玉木宏樹 】
作曲家・ヴァイオリニスト
1943年、神戸生まれ。1965年東京芸術大学ヴァイオリン科卒業後、山本直純氏に作曲と指揮を師事。MIDI出現以前に7台のシンセとフルオーケストラのための交響曲『雲井時鳥国』をライブ録音。「大江戸捜査網」(テレビ東京)、「おていちゃん」(NHK朝のTV小説)、「怪奇大作戦」(円谷プロ)他TV作品多数、CM約1500曲。
NHK合唱コンクール課題曲他、作品多数。純正律ミネラル・サウンドCD三部作『光』『響』『時』(キングレコード)「春へのあこがれ〜ミーントーンハープとヴァイオリンによる純正律でモーツァルトを〜」(アルキ)他、CD多数。近著に『純正律は世界を救う』(文化創作出版)。現在特定非営利活動法人純正律音楽研究会代表。洗足学園音楽大学講師 。

■ごあいさつ

  本日は、洗足学園音楽大学・現代邦楽コース開設記念「三味線とオーケストラの出会い」のコンサートにご来場賜り、厚く御礼申し上げます。
 本年4月、三絃の西潟昭子教授を中心に、洗足学園音楽大学現代邦楽コースは新しい「邦楽」を発信すべく船出を致しました。日本人が長い歴史の中で慣れ親しんで来た伝統音楽を多方面から見直し、流儀や形式にとらわれず、ジャンルを超え、21世紀の現代に即した音楽として広く理解していただくことを最大の目標として、学生達は日々研鑚を積んでおります。具体的には、現代邦楽の専門家(演奏家)の育成、音楽大学の特徴を活かしたクラシック音楽とのコラボレーション活動、邦楽に強い教員の育成等をかかげています。
 「演奏」をカリキュラムの中心に据える本学では、学生の手本となるべく、指導教員による演奏会も多数行っており、西潟教授も満を持して本日の演奏会に臨まれています。
 西潟教授が懇意にされており、委嘱を快諾頂きました、ジョバンニ・ソッリマ、玉木宏樹、池辺晋一郎の各氏の三絃協奏曲を、ウィーンより駆けつけて頂きましたYUKI森本氏の指揮により演奏致します。三絃とオーケストラのコラボレーションを存分にお楽しみいただけましたら幸いです。
 また、本年12月8日(木)から11日(日)までの4日間、学生達の授業成果の発表の場であります、恒例の「SENZOKU冬の音楽祭2005」も開催されますので、どうぞご期待下さい。

足学園音楽大学 
学長 前田 壽一


 日本の音楽大学は西洋で生まれ発展した音楽の追求と研究に主力が置かれ、自国の音楽を軽視する傾向にあります。それは、日本の音楽(邦楽)が世襲などによる独自の慣習や作法など、伝統の重さが影響しているためでもあります。
  日本の伝統ある邦楽を広く世界に発信し、日本の音楽の存在価値の認識を高めるべく、洗足学園音楽大学では、「現代邦楽コース」を2005年より三絃の西潟昭子を中心とする教授陣により開設致しました。
 この現代邦楽コース開設記念の一環として、西潟昭子教授の「三味線コンチェルト演奏会」が洗足学園音楽大学フィルハーモニー管弦楽団の共演で本日開催の運びとなりました。「洗足学園音楽大学フィルハーモニー管弦楽団」は洗足学園創立80周年を記念して創設され、本学の教員、卒業生、大学院生、学部生で構成し、今年は5回のコンサートに出演、「洗足学園」の新しい顔としての方向性を示唆しています。
 全曲委嘱作品による現代の邦楽曲を、名手「西潟昭子」とオーケストラの共演でご堪能いただき、ご批評を賜れれば幸甚です。

洗足学園音楽大学
音楽学部長 岡田 知之


西潟昭子について

 生まれ年は二黒土星、しかし四柱推命の五行の星をあげれば、ほとんど火と金ばかりである。火は情熱を、金は理性を意味するから、自らの理性を熱情で支配して走る象である。簡単に言えば、理性では損をすると分かっていても、一たび感性に火がついて、燃え上がれば、その思いを実行して止まないというマグマのような星である。しかもこのマグマの炎は己自信が燃えるだけでなく、その周囲の星もみな巻き込んでより大きな炎として燃え上がるのである。西潟昭子の創立した現代邦楽研究所は、まさに彼女の熱情が理性を抑えて生み出した新星といえる。
  たまたま私は現代邦楽研究所の設立準備から今日まで、門外漢でありながら、その経緯を見続けてきた。というより眼が離せなかったのである。この新星の燃料はほとんど自からのエネルギーによって創出されていたし、そのため身体も精神も酷使していたからである。そしてまたこの10年、彼女の宇宙空間にある多くの星がこの新星に巻き込まれていった。
  パートナーであり写真家の竹内敏信、そして作曲家の三枝成彰、池辺晋一郎、玉木宏樹、箏演奏家の福永千恵子、石垣清美、、、、、そして東洋医学が専門の私、「よい演奏家には腕のよい治療家が必要」というのが私への殺し文句であった。
  そして今年現代邦楽研究所は洗足学園音楽大学の付属となった。西潟昭子はまさに須弥山に翔ぶ迦陵頻迦のような女である。いつまでも日本のみならず世界に邦楽の音色を響かせて止まないことを祈る次第である。

薬学博士・現代邦楽研究所講師
根本幸夫


「伝統を未来へ」

 本来は国境があってはならない音楽の世界にも、歴然とした国境があり、偏見があります。知らないことを嫌いなこととし、新しいことにはそれだけで背を向ける、それは残念ながら本質的に自由であるべき音楽家にさえ、残念ながら多く見受けられることではないでしょうか。
 西潟昭子さんは、長年にわたってそうした国境や偏見の存在を鋭敏に嗅ぎ分け、敢えて困難な道程を選びながら、伝統楽器である「三弦」の未来への可能性を大きく拓いて来られたました。 さらにまた、伝統音楽が果たすべき本質を見極めた西潟さんの視点は、単に演奏活動に止まらず、将来を担う人材の育成へと広がり、その豊かな実りは「現代邦楽研究所」の設立であり、洗足学園大学における現代邦楽コースの開設
へと連なっています。
 本日、ここ東京芸術劇場大ホールにおきまして、洗足学園音楽大学・現代邦楽コース開設記念〜三味線とオーケストラの出会い「西潟昭子・三味線コンチェルト2005」が開催されますことを、心からの尊敬を持ってお祝いを申し上げます。

財団法人日本伝統文化振興財団
理事長 藤本草

■ 出演
三絃 西潟昭子
チェロ ジョヴァンニ・ソッリマ
福永千恵子
十七絃 石垣清美
尺八 三橋貴風
現邦研アンサンブル
箏:  野澤佐保子 吉原佐知子
十七絃: 染谷京子
三絃: 野沢徹也 山本普乃 上原潤之助
尺八: 山口賢治
指揮 Yuki森本
オーケストラ (洗足学園音楽大学フィルハーモニーオーケストラ)
Concert mistress: 水野佐知香
Vn: 伊佐山加奈子 磯辺絵馬 伊藤浩史 井本裕輝子 岩切雅彦  梅津美葉 大井実夏
大川淋子 岡田明奈 工藤由紀子 桑原菜摘  小池真理 里美奈穂子 中一乃
中田智美 永峰高志 藤村まみ  町井江美 宮家陽子 矢野桃子 山田ひろみ
Va: 諌山翔一 小野美子 梯孝則 腰尾亜矢子 武村京子 西岡崇  向井しのぶ
吉田真理子
Vc: 浅川岳史 岡田京子 高橋忠雄 對馬藍 中島恵 和田有子
Cb: 井戸田善之 斉藤直樹 澤田有美 吉本浩子
Harp: 杉山敦子
Fl: 市橋茜 上田恭子 湯浅朋子
Ob: 武石宣子 弘瀬麻子
Cl: 千葉直師 武藤宏美
Fg: 大阪智子 光岡靖枝
Hr: 飯笹浩二 田中大地 田中直樹 渡部奈津子
Tp: 浜野耕平 古田賢司 牧野宏哲
Tb: 植松雅史 紀村雄一 佐々木舞
Tuba: 園田泰之
Per: 岡田知之 高田亮 鶴田純 細谷晋 本田愛子 森田伸幸
■ 主 援 西潟昭子
■ 共 催 洗足学園音楽大学
■ 後 援 財団法人日本伝統文化振興財団
■ 協 賛 第60回記念文化庁芸術祭
■ 助 成 芸術文化振興基金
■ 協 力 三味線かとう
■ マネージメント (株)TAオフィス
〒161-0033 新宿区下落合3−20−4
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