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■収録曲
玉木宏樹 作曲

1   「いちめんの菜の花」
2   「桜ファンタジー」
3   「浜辺の歌」
4・5   「ジャワリ」
6   「TANGO-AKIKO」
7・8・9 「四季のうた」
10   「迷宮」
11   「猫?・・・」

 
■演奏
西潟昭子/玉木宏樹/福永千恵子/石垣清美/三橋貴風/ 山本普乃/野澤徹也
定価 \3,000(税込)
ARCH10320
「いちめんの菜の花」(693kb)  
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■CD解説より
インテリジェンスあふれる純正律の遊び
茂手木潔子(上越教育大学教授)
 
西潟さんと玉木さんで新しいCDを出したという。この2人の奇才は、今度はどんなことを目論んでいるのだろう。興味津々で一曲目を聞いた。
「これが箏の音? 三味線の音?」その不思議な響きに、時代と空間を超えた懐かしさを感ずる。西潟さんの三味線の音色は特に個性的ではあるけれども、それにも増して、日本の楽器の根底に潜んでいたユーラシアの響きが純正律のチューニングによって輝きだしたとでも言えようか。
「いちめん菜の花」。この短い文章が、時には箏歌として、あるいは謡のように、そして万歳の太夫と才蔵の掛け合いに似て、表情と間を変えながら積み重ねられる。そして、この声を支える絃楽器群が、あたりいちめん黄色に彩られた空間を現出させる。この鮮烈な響きの中に身をおく心地よさ。
平均律に調弦されたピアノの余韻に残る不協和な音色に、いつも居心地の悪さを感じていた私にとって、どこまでも澄み切った音を持続させる調弦法は非常に魅力的な存在だ。このCDで試みられた鋭く煌めく響きは、三味線や箏に実に良く似合う。純正律の調弦を施された箏は、音色の変化によって三味線のように存在価値を主張する響きに変わることが出来る。そして、ヴァイオリンの響きが加わったことは、日本の弦楽器に大陸的なイメージをもたらし、まるで世界のどの弦楽器も、チグリス・ユーフラテス川に向かって先祖がえりできるような錯覚を起こさせる。
このCDの中ほどに挿入された「浜辺の歌」は閑話休題のようだ。しばし、普通のハーモニーの世界に戻ったところで、「いざ出陣」としての「ジャワリ」の演奏が始まっている。「浜辺の歌」が置かれることで、三味線のサワリの個性はよりいっそう際立ちを見せる。
このCDには、これまで西潟昭子がリリースしてきた一連の現代作品シリーズと異なった、日本音楽の「遊び」の世界が詰まっている。卓越した技に支えられた演奏家だからこそできた、インテリジェンスに満ちた音の遊びである。
 
最後の「猫・・・」のあと、CDは自動的に第一曲目に戻った。ふたたび繰り返して聞く。すると、猫の鳴き声が「浜辺の歌」からも聞こえてきた。思わず「なるほど」と納得する三味線の音色の面白さ。でも、玉木・西潟コンビだからこれだけでは終わらないだろうと勘ぐって、もう一度「いちめん菜の花」を聞いてみる。おや? 菜の花の向こうで15世紀のイスタンブールの軍隊が行進している? いやいや、これは考えすぎだろうなあ。
いろいろ楽しめるCDの登場である。
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